ステロイド外用剤の副作用(論文紹介)

こんにちは!

 

本日は、ステロイド外用剤の副作用についての論文をご紹介したいと思います。

私はアトピー性皮膚炎*1とずっと付き合っているのですが、ステロイド外用剤の副作用についての話は皆さんもよく聞くところではないでしょうか?

私も、なるべくステロイドを使わないようにと思って幼少期を過ごしてきました。

 

しかしながら、ここ最近は、副作用について大げさに言われることも少なくなってきたと思います。一昔前は、かなり恐怖心をあおるような記事が多かったと思うのですが、

今、ヤフーで検索してみても、至極真っ当な記事が出てきますね。↓↓

https://search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89+%E5%89%AF%E4%BD%9C%E7%94%A8&aq=-1&oq=&ts=8&ei=UTF-8&fr=crmas&x=wrt

 

日本アレルギー友の会↓↓

https://allergy.gr.jp/consult/atopy/faq

とても良いサイトですね。

 

というわけで、最近はどうでしょう、ステロイドの副作用が恐くて悩まれる方も減ってきているのでしょうか。

 

というわけで需要があるのかないのか分かりませんが、(笑)

本日は、実際にステロイド外用剤の使用で副作用が報告された事例を紹介したいと思います。

皆さんは、実際にどういう使い方をするとどんな副作用が起きるのかを知っていますか?

私はそういった本質を理解せずに、ステロイドの使用を避けていた時期もありました。

漠然とした不安というものは、恐怖を煽り、正常な判断を阻害します。

 

私自身は、巷に広がる「ステロイドへの恐怖」というものは、

ステロイドを止めると悪化する

ステロイドを止められなくなる

の2点だと思っています。

これが、真実かどうかは、記事の最後で述べたいと思います。

 

 

 「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」ということわざがあります

本記事が、皆さんが彼(ステロイドの副作用)を知り、皮膚炎と上手く付き合っていく際の一助になれば幸いです。

 

 

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あと、余談なんですが、ムキムキマッチョになりたい人が 使う「ステロイド*2ですが、これは副腎皮質ホルモン(糖質コルチコイド)の「ステロイド*3とは異なるものです。

すごく紛らわしいのでやめていただきたいのですが、慣習からどちらも単にステロイドと呼ばれています。

マッチョのステロイドは筋肉増強剤ですが、皮膚炎治療のステロイドは筋肉を委縮させますのでご注意を。。

同音異義語です。

**

 

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※写真は内容とは関係ありません 

 

 

 

 

 論文紹介

さて、本日ご紹介する論文ですが、

残念ながら、オープンアクセスではありませんが(読むのにお金がかかります)

一つの情報として興味をもっていただければなによりです。

(今度はオープンアクセスの論文を紹介します。反省。)

 

 

 

では、こちら!

 

Adrenal insufficiency as a result of long-term misuse of topical corticosteroids. *4

 

タイトル訳: 長期間にわたる不適切な局所副腎皮質ホルモン剤(コルチコステロイド)の使用によって引き起こされた副腎不全

要するに、ステロイド外用剤を使って、副作用で副腎の機能がおかしくなったよ、っていう話です。

 

 著者はBöckle BCさん, Jara Dさん, Nindl Wさん, Aberer Wさん, Sepp NTさんの5人です。

所属機関はDepartment of Dermatology, Innsbruck Medical University, Innsbruck, Austria.

オーストリア医科大学の皮膚科となっています。

 

 

 

本論文では、二人の患者が登場します。

一人はアトピー性皮膚炎(患者Aとします)、一人は乾癬(患者Bとします)を患っていました。*5

 

さてさて、今回の患者さんは、どちらも長期間のステロイド外用剤の使用歴があります。

少しややこしいのですが、Aの方は数年前にステロイドの静脈注射を受けていました。

しかしながら、受診時には、AもBも、ステロイド外用剤を長期間使用していたという状況になります。

 

 

患者Aの場合

まず、Aについてです。

34歳男性。

アトピー性皮膚炎を11年間患っていました。

ステロイド外用剤の使用歴は同じく11年間です。

主な症状等は以下の通り:

・紅皮症(皮膚が赤く腫れた状態になる)

・顕著な皮膚萎縮(これにより両脇に複数の紫色のスジが見られた)

・出血斑、紫斑病(あざのようなもの)

・脂肪の偏り

・両足の筋肉の萎縮

・顔の膿疱

 ・血中コルチコステロイド濃度の減少
 (朝の血中濃度が13μg/L《正常範囲は51-236》)

 

 

患者Bの場合

続いて、Bの説明です。

24歳男性。

7年間患っている乾癬が悪化し、来院しました。

ステロイド外用剤は同じく7年間使用しておりました。

主な症状等は以下の通り:

・野牛肩

・筋肉の萎縮

・皮膚萎縮

・右脇に紫色のスジ

・顔面の膿疱

・血中コルチコステロイド濃度の減少(朝の血中濃度が4μg/L《正常範囲は51-236》)

 

 

本当はとても幅広い副作用

ここまで目を通してくださった方、ありがとうございます。

詳しい言及は避けますが、患者の症状は、主にクッシング症候群によるものでした。*6

 

さて、ネットではステロイドの副作用について色々と書かれていることがありますが、果たしてどれほど根拠のあるものなのでしょうか?

今回ご紹介した論文は、国際誌で英文で書かれて出版されているもので、立派な根拠になりうるものです。

私も調べるまで、巷で言われるステロイドの副作用はどこまで本当なのだろうか?と思っていましたが、本当にあるんですね。

特に、紅皮症などや皮膚萎縮などは、いかにもといった感じの副作用ですね。

 

 

ただし、このケースは、かなり長期間、不適切に使用した場合の話です。

ここでは、決して、やみくもにステロイド外用剤の使用について、不安を煽りたいわけではありません。

 

 

 

 

 

それって本当にステロイドの副作用なの?

アトピーは今でも原因がはっきりしておらず、一生付き合っていかなければならない病気です。(今後、原因解明が進み、完治するようになるかもしれませんが。)

症状が出ていない状態のことを「寛解」と言います。*7

アトピーは「寛解」にもっていくことはできても、「完治」させることはなかなか難しいのです。

 

完治させることは難しいが、症状を抑えることはできる、

これを逆手に取って、アトピービジネス*8が起こりました。

ステロイドを止めると症状が悪化する→そんな薬に頼っていてはダメになる→もっといいものを紹介しよう 

と、こういう構図になるわけですね。

 

 

ここで、本論文の副作用を振り返りますと、ステロイドの副作用というものは、とても幅広く、おそらく一般の方の理解を超えるものだと思います。

(副腎皮質ホルモンは生体内で実に様々な作用を有しており、副作用も多岐に渡ります。本記事も、論文の内容をそっくりそのまま書いているわけではありません)

今回のケースは、かなり長期間(それぞれ11年と7年間)、医師の指導を守らずにステロイド外用剤を使用し続けてきた結果です。

ですが、お二人の患者はその後1年ほどかけて、どちらも通常の状態に戻していくことができました。

 

ここで、皆さんに考えていただきたいことは、自身が思い描くステロイドの副作用というものは「本当にステロイドの副作用なのか?」ということなのです。

 

ステロイドを何年使用しても、止めたら皮膚炎が悪化する。

ステロイドを中止したら悪化するので止められなくなる。

それは、当たり前のことです。

ステロイド外用剤は魔法のような薬ですが、少なくともアトピー性皮膚炎を根本から直すものではありません。

患者は、その事実を受け入れなければなりません。

 

私も幼少期は、いつかアトピーは治るもの、「完治」するものだと思っていました。。

 

しかし、アトピーとは、体質のようなものです。

  • いくら努力しても、プロ野球選手のように160キロのストレートは投げれない。
  • いくら努力しても、曙のように200cm、200キロの巨漢にはなれない。
  • いくら努力しても、アトピー性皮膚炎は「完治」はしない。

すべて同じことです。

例えば、アトピーの患者では、皮膚に含まれるフィラグリンというタンパク質をコードする遺伝子が欠損している方が多いことが知られています。*9

 

 

しかしながら、完治することはないという事実を受け入れ、ステロイドを適切に使用するようになってから、私自身のQOLはかなり向上しました。

普通にスポーツをして、普通にお風呂に入って、普通に寝れる日々。

ステロイドはとても素晴らしい生活を与えてくれました。

 

人は皆、食事を取りますし、空気も吸いますし、睡眠もとらなければ体調を崩します。アトピーの方は、そこにステロイドが加わっただけだと思えば、少し気が楽になりませんか?

 

 

 

まとめ

本記事では、ステロイド外用剤の長期使用で実際に副作用が報告された事例をご紹介しました。

論文中では、なかなかショッキングな写真も載っています。(ここでお見せできませんが。)

 

ここで、やっぱりステロイドは危険だと考える方もいらっしゃると思います。

私も改めて論文を読んで、ステロイドの副作用は複雑だなあ、と感じました。

ですが、基本的に外用剤のみでこのような副作用が起こる可能性は低いものです。

ステロイドの内服はもっと副作用のリスクが上がります)

 

私自身は、巷に広がる「ステロイドへの恐怖」というものは、

ステロイドを止めると悪化する

ステロイドを止められなくなる

の2点だと思っています。

私自身もそこが恐怖の対象でした。

 

ですが、この2点に関しては、至極当たり前の事実であり、これはおよそ「副作用」と呼べるものではありません。

例えば、ここで「ステロイド」を「ご飯」に置き換えても成り立ちます。

・ご飯を食べるのを止めると死ぬ

・ご飯食べるのは止められなくなる(生命を維持するために。)

これは、果たしてご飯の副作用なのでしょうか??

おそらく、答えは「No」でしょう。

 

 

 

本記事において、「本当のステロイドの副作用」について関心をもっていただけたなら幸いです。

ステロイドに対する漠然とした恐怖心」と向き合う際の参考にしていただければと思います。

 

そして、アトピーで悩んでいる方の背中を、少しでも押すことができれば、私はこの上なく幸せです。

 

 

 

本日もお読みいただきありがとうございました!\(^o^)/

 

 

 

アレルギー関連の記事はこちら↓↓

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*1:https://kotobank.jp/word/%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%BC%E6%80%A7%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E-26221

*2:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%9C%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89

*3:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%E5%A4%96%E7%94%A8%E8%96%AC#cite_note-16

*4:Böckle BC, Jara D, Nindl W, Aberer W, Sepp NT. Adrenal insufficiency as a result of long-term misuse of topical corticosteroids. Dermatology. 2014;228(4):289-93. doi: 10.1159/000358427. Epub 2014 Apr 15.

*5:https://kotobank.jp/word/%E4%B9%BE%E7%99%AC%28%E3%81%8B%E3%82%93%E3%81%9B%E3%82%93%29-882311

*6:https://medicalnote.jp/diseases/%E3%82%AF%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4?utm_campaign=%E3%82%AF%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo

*7:https://kotobank.jp/word/%E5%AF%9B%E8%A7%A3-469274

*8:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9

*9:Palmer CN, Irvine AD, Terron-Kwiatkowski A, Zhao Y, Liao H, Lee SP, Goudie DR, Sandilands A, Campbell LE, Smith FJ, O'Regan GM, Watson RM, Cecil JE, Bale SJ, Compton JG, DiGiovanna JJ, Fleckman P, Lewis-Jones S, Arseculeratne G, Sergeant A, Munro CS, El Houate B, McElreavey K, Halkjaer LB, Bisgaard H, Mukhopadhyay S, and McLean WH. Common loss-of-function variants of the epidermal barrier protein filaggrin are a major predisposing factor for atopic dermatitis. Nat Genet. 2006 Apr;38(4):441-6.