レチノールとレチノイン酸の効果の違い~シワ改善・コラーゲン産生促進~(論文紹介)

こんにちは!

 

 

今回は
レチノールレチノイン酸の効果に違いはあるのか?

という疑問に答えていきたいと思います。

論文紹介です。 

 

※すぐに知りたい方は「結論」へ飛んでください。

  

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※画像はイメージです。本文の内容を反映しているものではありません 。

  

 

そもそもレチノイン酸、レチノールとは?

レチノイン酸レチノールが属する
ビタミンAのグループ(レチノイド)には
「表皮細胞の増殖促進(ターンオーバー促進) 」
等の効果があり、”シワ” ”ニキビ” ”乾癬” などを対象に、
世界中で医薬品等に利用されています。*1

またビタミンAは、目が光を感知するのに使われるため、
いわゆる「鳥目(夜盲症)」の治療にも利用されます。*2

 

 

論文紹介

ご紹介する論文はこちら!

ジャジャン!

A comparative study of the effects of retinol and retinoic acid on histological, molecular, and clinical properties of human skin.*3

 

タイトル意訳:

ヒト皮膚における
レチノールとレチノイン酸の
組織学的、分子学的及び臨床効果の比較研究

 

 

※本記事は簡潔にご紹介しています。

詳細を知りたい場合は
英語原文(https://doi.org/10.1111/jocd.12193
をご確認ください。

 

オープンアクセス

ちなみに、本論文は「オープンアクセス」です。*4

日本学術振興会によると、

論文のオープンアクセス化とは、簡潔に言うと、誰でもWebを通じて無料で自由に論文へアクセスできるようにすることです。

(中略)

論文のオープンアクセス化が拡大すれば、学術情報が様々な制約なく流通・入手することが可能となり、学術研究の発展に寄与します。また、異なる分野の研究成果に触れることも容易になるため、研究の幅が広がり、さらには、世界の国々の情報格差の解消にも役立ちます。

要するに、ネットにアクセスさえすれば、誰でも(今、この記事を見つけてくださったあなたでも)人類の英知に触れることができるよ、という素晴らしいシステムです。

興味をもった方は、是非原文を自分の目で読んでくださいね。

 

 

目的

 本研究のテーマは
レチノールレチノイン酸の効果の比較」です。

 

背景 

現在、レチノイン酸レチノールなどのレチノイドは
肌のアンチエイジングに利用されている。

(日本では、レチノイン酸は化粧品には配合禁止です)

 

1980年代中ごろ、
光老化に効果をもたらすものとして
レチノイン酸が見出された。

その後、レチノイン酸には
コラーゲン分解酵素を阻害することで、
コラーゲンの形成を助けることが発見された。

 

レチノイン酸の前駆体であるレチノールにも、
「表皮細胞の増殖促進」
マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase: MMP)の阻害」
「コラーゲンの合成促進」
「シワ改善」
等の効果が報告されている。

 

※MMPはコラーゲン等を分解する酵素です。

 

以上の研究報告があるものの、
レチノールレチノイン酸
どちらがより効果が高いのかは明らかではない。

本研究では、
レチノールレチノイン酸
肌への効果を直接比較した。

 

 

方法

実験Ⅰ

4週間、6人の被験者の上腕部の三か所に塗布した。

塗布するものは、それぞれ以下の3通り。

 

①基剤のみを塗布

②0.1%レチノールを塗布

③0.1%レチノイン酸を塗布

 

◆組織学・分子学的な解析:

4週間後、皮膚を一部採取し
以下の解析を行った。

①HE染色

②共焦点レーザー顕微鏡

②リアルタイムPCR

③免疫染色

 

皮膚の採取は、
試験のためとはいえ痛そうです。。。

 

実験Ⅱ

41名の女性の被験者に12週間、
0.1%レチノールを使用してもらった。

◆臨床効果の解析:
12週間後、
『画像解析によるシワ評価』を行った。

シワスコアはIFSCC(国際化粧品技術者会連盟)
の基準に従って評価した。*5

 

 

結果と考察

◆組織学・分子学的な解析:

レチノールあるいはレチノイン酸
塗布した両方の部位において、
以下の結果が得られた。

①皮膚の肥厚
表皮細胞の増殖:ターンオーバーの活性化

コラーゲンを作る遺伝子の発現促進
(コラーゲンタイプ1と3の両方)

プロコラーゲンタンパク質の産生促進
(コラーゲンタイプ1と3の両方)

※プロとは、前駆体のことで、
実際に保湿効果を持つコラーゲンに
なる前の段階のタンパク質のこと。

 

ただし、その全てにおいて、
レチノールよりもレチノイン酸
の方が効果が高かった。

 

 

 ◆臨床効果の解析:

12週間の0.1%レチノールの使用により、顔面のシワが改善された。

シワスコアは、

頬で63.74%、目の周りで38.74%減少した。

  

 

結論

①本研究において、レチノールレチノイン酸と同様の組織学的な効果をもたらすことが示された。

レチノイン酸と比較したとき、レチノールの効果が少し劣っているものの、半分かそれ以上の効果は得られた。

レチノイン酸がシワを改善する作用は既に知られているが、レチノールでも同様の臨床効果が得られた。

以上のことより、
レチノールレチノイン酸に少し劣るものの、
同様の効果を発揮する
ということが示された。

 

 

まとめ

今回は、レチノールレチノイン酸の効果を比較した論文をご紹介しました!

いかがだったでしょうか??

 

結論としては、どちらも十分効果を発揮するよ!ということになります。

レチノイドには他にも様々な種類があり、
皮膚疾患の治療に使われています。*6

しかしながら、今回示されているような、
「コラーゲン産生促進作用」
「シワ改善作用」
などから、医療用医薬品のみならず、

薬用化粧品としての効果も期待されています。

 

また、本研究では、
レチノールレチノイン酸の使用により、
フィラグリン遺伝子の発現が
促進されることも明らかになりました。

このフィラグリンは皮膚保湿因子の仲間であり、
このタンパク質の機能が不十分だと、
アトピー性皮膚炎になりやすいことが
知られています。*7

  

ビタミンA(レチノイド)は肌に様々な効果をもたらしてくれるんですね(^^)

  

 

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました!\(^o^)/

 

 

 

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*1:Zasada M, Budzisz E. Retinoids: active molecules influencing skin structure formation in cosmetic and dermatological treatments. Postepy Dermatol Alergol. 2019 Aug;36(4):392-397. doi: 10.5114/ada.2019.87443. Epub 2019 Aug 30.

*2:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%9C%E7%9B%B2%E7%97%87

*3:Kong R, Cui Y, Fisher GJ, Wang X, Chen Y, Schneider LM, Majmudar G. A comparative study of the effects of retinol and retinoic acid on histological, molecular, and clinical properties of human skin. J Cosmet Dermatol. 2016 Mar;15(1):49-57. doi: 10.1111/jocd.12193. Epub 2015 Nov 18.

*4:https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/08_openaccess/index.html

*5:Di Qu and Yulia Park. Skin Youthfulness Index – A Novel Model Correlating Age with Objectively Measured Visual Parameters of Facial Skin. Conference: IFSCC Magazine, Volume: Vol. 17, Issue 3, p9-16

*6:Zasada M, Budzisz E. Retinoids: active molecules influencing skin structure formation in cosmetic and dermatological treatments. Postepy Dermatol Alergol. 2019 Aug;36(4):392-397. doi: 10.5114/ada.2019.87443. Epub 2019 Aug 30.

*7:Palmer CN, Irvine AD, Terron-Kwiatkowski A, Zhao Y, Liao H, Lee SP, Goudie DR, Sandilands A, Campbell LE, Smith FJ, O'Regan GM, Watson RM, Cecil JE, Bale SJ, Compton JG, DiGiovanna JJ, Fleckman P, Lewis-Jones S, Arseculeratne G, Sergeant A, Munro CS, El Houate B, McElreavey K, Halkjaer LB, Bisgaard H, Mukhopadhyay S, and McLean WH. Common loss-of-function variants of the epidermal barrier protein filaggrin are a major predisposing factor for atopic dermatitis. Nat Genet. 2006 Apr;38(4):441-6.