赤ちゃんの卵アレルギーは予防できる~健康な皮膚・アレルゲンの早期摂取~
こんにちは!
今回は
”どうすれば、子どもの卵アレルギーを予防することができるか”
というテーマでお話していきます!
結論から申し上げると、
①離乳食で早くから卵を食べさせること
②アトピー性皮膚炎等を改善し、皮膚の状態を良好に保つこと
の二点が重要になってきます。
本記事が、卵アレルギーに関わる方々の参考になれば幸いです。
※アレルギーを発症している場合は、必ず医師の指示を仰いでください。
※画像はイメージです。本文の内容を反映しているものではありません 。
食物アレルギーは食べる前から始まっている!
「アレルゲンとなる食物を食べると、食物アレルギーが発症する(症状が出る)」
ということは、この記事に来て下さった方なら、
当然理解されていることと思います。
ところが、
「そもそも、なぜアレルギー患者が、特定の食品に対してアレルギー反応を起こすようになるのか?」
という問いに答えることができる方は、
どれほどいらっしゃるでしょうか??
実は、食物アレルギーは、
次の2つの過程を経て発症する
ということが近年明らかになってきました。*1
①アトピー性皮膚炎等によって
”炎症の起こっている皮膚”から、
食物アレルゲンが侵入することによって、
アレルギーを発症する準備が整う。
②準備が整ったアレルゲンを口から食べることで、
食物アレルギーが発症する
昔と言ってることが違う
「いやいや、まだ腸管が未成熟な、早い時期に離乳食を食べ始めるからアレルギーになるんでしょ?」と思ったそこのあなた。
そうなんです。
実は、2000年ごろまで
専門家の間でも、
そう信じられていました。
2000年の米国小児科学会では、
乳幼児期には、アレルゲン性の高い食品を
避けることが推奨されていました。*2
パラダイムシフト
ところがどっこい。
2003年、Lackらは
それまでの常識を覆す論文を
発表しました。*3
その内容は
「ピーナッツを含む保湿オイルを塗った子供達は、ピーナッツアレルギーになる割合が8倍に増加した。
特に、アレルギーを発症した子供の皮膚には、炎症が生じていた。」というものでした。
この発表を受けて、
食物アレルギーは皮膚から侵入することが
始まりであるとの認識が広まりました。
(専門的には”経皮感作”と呼ばれるものです)
さらに、
2008年のDu Toitらの論文によって、
「乳幼児期のアレルゲンの
摂取は避けるべき」
という常識も覆されました。*4
その内容は
「乳幼児期の早い段階で
ピーナッツを食べた子供の方が、
ピーナッツアレルギーの発症が少なかった」
というものでした。
(専門的には”経口免疫寛容”と呼ばれるものです)
その後、2008年、
アメリカの小児科学会のガイドラインで、
「乳幼児期に、アレルゲン性の高い食品を避けることは、
食物アレルギーの抑制に有効とはいえない」
という内容が記されるに至りました。*5
卵アレルギーの場合も同様
さてさて、
前置きが長くなってしまいました。^_^;
”ピーナッツ”が、この食物アレルギーの
パラダイムシフトの先駆けでしたが、
卵アレルギーの場合も同様です。
2016年、
Shodaらの論文の中で
「生後1~4ヶ月の間の皮膚の炎症が、
卵アレルギーのリスクを高める」
という内容が示されています。*6
(経皮感作の示唆)
また、Fisherらは2018年の論文の中で
「乳幼児期の卵の摂取
は卵アレルギーの予防に有効である」
と結論付けています。*7
(経口免疫寛容の確認)
したがって、
ピーナッツアレルギーの場合と同様、
「皮膚を良好に保ち、
離乳食の早期から卵を食べることで、
卵アレルギーを予防できる可能性が高い」
という結論が導き出されます!
食物アレルギー診療の手引き2017
ここまで、
食物アレルギーの認識が
変わっていく歴史の流れについて
解説してきました。
では、現在の日本のガイドラインを見てみましょう。
以下、「食物アレルギーの診療の手引き2017」からの引用です。*8
食物アレルギーの発症予防のために妊娠中と授乳中の母親の食物除去を行うことを推奨しない。食物除去は母体と児に対して有害な栄養障害を来す恐れがある。
はっきりと
「食物除去は推奨しない」
ということが明記されています。
離乳食の開始時期については、
次のように説明されています。
生後5~6か月頃が適当(わが国の「授乳・離乳の支援ガイドライン2007」に準拠)であり、食物アレルギーの発症を心配して離乳食の開始を遅らせることは推奨されない。
ここでも
「離乳食の開始を遅らせることは推奨されない」
と述べられています。
さらに、鶏卵アレルギーに関しては、
次のような提言がされています。
アトピー性皮膚炎の乳児では、鶏卵の摂取が遅いほど鶏卵アレルギーを発症するリスクが高まることから、鶏卵アレルギー発症予防を目的として、医師の管理のもと、生後6か月から鶏卵の微量摂取を開始することを推奨する。
鶏卵の摂取を開始する前に、アトピー性皮膚炎を寛解させることが望ましい。
すでに鶏卵アレルギーの発症が疑われる乳児に安易に鶏卵摂取を促すことは危険であるため、「食物アレルギー診療ガイドライン2016」に準拠した対応をする。
ここでも
「鶏卵の摂取が遅いほど、
鶏卵アレルギーの発症リスクが高まる」
ということが明言されています。
また、
「アトピー性皮膚炎を寛解させることが望ましい」
と記載されており、
つまりは「皮膚の状態を良好に保つこと」
が重要であるといえます。
ただし、
すでにアレルギーの発症が疑われる場合には、
当然ながら鶏卵の摂取は危険です。
その場合には、
医師の指示に従うことが必須ですので、
注意してください。
まとめ
以上に述べたように、
食物アレルギーに関する認識は
近年、目まぐるしく変わってきています。
卵アレルギーに関しても同様で、
発症を防ぐためには、
①離乳食で早くから卵を食べさせること
②アトピー性皮膚炎等を改善し、皮膚の状態を良好に保つこと
の2点が非常に重要である、
ということが明らかになってきています。
本記事が、卵アレルギーに関わる方々の参考になれば幸いです。
アレルギーで苦しむ人が、
少しでも減りますように(^^)
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました!\(^o^)/
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論文紹介はこちら↓↓
*1:Lack, G. Epidemiologic risks for food allergy. J. Allergy Clin. Immunol. 121, 1331–1336 (2008).
*2:American Academy of Pediatrics. Committee on Nutrition. Hypoallergenic Infant Formulas. Pediatrics 106, 346–349 (2000).
*3:Lack, G., Fox, D., Northstone, K. & Golding, J. Factors Associated with the Development of Peanut Allergy in Childhood. N. Engl. J. Med. 348, 977–85 (2003).
*4:Du Toit, G. et al. Early consumption of peanuts in infancy is associated with a low prevalence of peanut allergy. J. Allergy Clin. Immunol. 122, 984–991 (2008).
*5:Greer, F. R., Sicherer, S. H. & Burks, A. W. Effects of Early Nutritional Interventions on the Development of Atopic Disease in Infants and Children: The Role of Maternal Dietary Restriction, Breastfeeding, Timing of Introduction of Complementary Foods, and Hydrolyzed Formulas. Pediatrics 121, 183–191 (2008).
*6:Shoda, T. et al. Timing of eczema onset and risk of food allergy at 3 years of age: A hospital-based prospective birth cohort study. J. Dermatol. Sci. 84, 144–148 (2016).
*7:Helen R Fisher, George Du Toit, Henry T Bahnson, Gideon Lack. The Challenges of Preventing Food Allergy: Lessons Learned From LEAP and EAT. Ann Allergy Asthma Immunol. 2018 Sep;121(3):313-319. doi: 10.1016/j.anai.2018.06.008. Epub 2018 Jun 15.
*8:「食物アレルギーの診療の手引き2017」検討委員会. AMED研究班による食物アレルギーの診療の手引き2017. (2017).