クエン酸緩衝液(クエン酸バッファー)の原理を解説
こんにちは!
今回は、生命科学実験で代表的な緩衝液である、クエン酸緩衝液(クエン酸バッファー)の仕組みをご紹介します。
クエン酸緩衝液の調製には
①クエン酸C6H8O7
②クエン酸三ナトリウムC6H5Na3O7
の二つを用いますが、
緩衝作用のメイン分子は
③C6H7O7-
④C6H6O72-
の二つになります。
③C6H7O7-と④C6H6O72-の特性を理解できれば、クエン酸緩衝液の原理はバッチリです!
この記事を読んでほしい人:
・生命科学実験を始めた、始める予定の人
・緩衝液の原理を知りたい人
※画像はイメージです。本文の内容を反映しているものではありません 。
- 緩衝液とは何か
- クエン酸C6H8O7の構造式と特性
- クエン酸三ナトリウムC6H5Na3O7の構造式と特性
- クエン酸緩衝液(クエン酸バッファー)の調製
- クエン酸緩衝液(クエン酸バッファー)と酸の反応
- クエン酸緩衝液(クエン酸バッファー)と塩基の反応
- まとめ
緩衝液とは何か
緩衝液とは、外から酸や塩基を加えても、
pHが変化しにくい溶液のことです。
例えば、純水に強酸であるHClや強塩基であるNaOHを加えると、あっという間にpHが傾いてしまいますが、緩衝液中ではpHがほぼ一定に保たれます。
緩衝液の働きにより、目的の成分や試薬を加えても、pHを変化させずに実験が行えるようになります。
緩衝液は、それ自体が実験の対象になるものではなく、溶媒や希釈液として用いられることが多いものです。
クエン酸C6H8O7の構造式と特性
まずはクエン酸について見ていきましょう。
クエン酸の分子式はC6H8O7で表されます。
構造式は以下の通りです。
3つのカルボキシル基(-COOH)を持つクエン酸C6H8O7は、水に溶けると以下のようにH+を放出し、その水溶液は弱酸性を示します。
クエン酸C6H8O7は
H+を与える構造(酸としての性質)があるため、
塩基(OH-)を中和することはできますが、
H+を受け取る構造(塩基としての性質)がないため、
酸(H+)を中和することはできません。
クエン酸三ナトリウムC6H5Na3O7の構造式と特性
次にクエン酸三ナトリウムについて見ていきましょう。
クエン酸三ナトリウムの分子式はC6H5Na3O7で表されます。
構造式は以下の通りです。
C6H5Na3O7は水に溶けると、3つのNa+が電離することでC6H5O3-となります。
さらに、このC6H5O3-が以下のように3つのH+を受け取り、3つのOH-が生成されることで、その水溶液は強塩基性を示します。
先ほどとは反対に、C6H5O3-は
H+を受け取る構造(塩基としての性質)があるため、
酸(H+)を中和することができますが、
H+を与える構造(酸としての性質)はないため、
塩基(OH-)を中和することはできません。
では、この二つの性質を組み合わせて、酸も塩基もどちらも中和できる溶液を作っていきましょう!!
クエン酸緩衝液(クエン酸バッファー)の調製
クエン酸緩衝液を調製してみましょう。
①クエン酸C6H8O7
②クエン酸三ナトリウムC6H5Na3O7 ⇒ C6H5O3-
の両方を混ぜ合わせれば、クエン酸緩衝液(クエン酸バッファー)が出来上がります。
この二つを混合させたとき、弱酸であるC6H8O7がH+を放出し、強塩基であるC6H5O3-はH+を受け取ります。
その結果、③C6H7O7-と④C6H6O72-の2つが生成されます。
C6H8O7 ⇒ C6H7O7-
C6H5O3- ⇒ C6H6O72-
少しややこしくなってきましたが、C6H7O7-とC6H6O72-に着目してください。
(上図の一番下の二つの構造式)
このとき、二つの構造式を見て気が付くことはありますか?
そうです。
この二つの混合溶液中ではH+を受け取る構造と、H+を与える構造が共存しているのです。
では最後に、クエン酸緩衝液と酸・塩基との反応を見ていきましょう。
補足:クエン酸にはカルボキシル基が3つあり、それぞれランダムに反応します。そのため、色んな組み合わせの分子が出来上がります。ただし、今回示したクエン酸の構造式の右側と左側のカルボキシル基は、ひっくり返せば同じものなので、見かけ上は、これらが反応することが多いように見えます。
クエン酸緩衝液(クエン酸バッファー)と酸の反応
ではここで、この溶液に酸(H+)を加えてみましょう。
C6H6O72-がH+を受け取ってしまうため、溶液全体としてはpHが変化していませんね!
酸に対して、緩衝能を有しています。
クエン酸緩衝液(クエン酸バッファー)と塩基の反応
次に、この溶液に塩基(OH-)を加えてみましょう。
すると以下の反応が起きます。
C6H7O7-がH+を放出し、OH-を中和してくれましたね!
塩基に対して、緩衝能を有しています。
これで、酸(H+)と塩基(OH-)のどちらを加えても、pHが変化しなくなりましたね!!
まとめ
今回は、リン酸緩衝液(リン酸バッファー)の原理についてご紹介しました。
いかがでしたか?
大学で生命科学実験を始めると、必ず登場する緩衝液。
肝になる部分は、「H+を受け取る構造と、H+を与える構造が共存している」という状態です。
本記事が少しでも参考になれば幸いです。
皆さんの実験が上手くいきますように。
本日もお読みいただき、ありがとうございました! \(^o^)/
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