『ザーネ軟膏』の作用機序・効果【ビタミンA⇒レチノイン酸】
こんにちは!
私は幼少期からアトピー性皮膚炎を患っており、
「ザーネ軟膏」というものを使っています。
本日は、この「ザーネ軟膏」の
効果・作用機序をご紹介していきます!
※結構ややこしい話なので、
途中で分からなくなった場合は、
「まとめ」に飛んでください。^_^;
※画像はイメージです。本文の内容を反映しているものではありません 。
有効成分(活性成分)の含量
さて、「ザーネ軟膏」とはどういった医薬品なのでしょうか?
エーザイ株式会社から発売されている医療用医薬品です。
ザーネⓇ 軟膏 0.5%の医薬品インタビューフォーム(2014 年 9 月改訂(改訂第 6 版) )によると*1、
有効成分の含量は次のように定義されています。
1g中にビタミンA油 5mg(ビタミンAとして 5,000 ビタミンA単位)を含有する。
つまり、
ザーネ軟膏は、ビタミンAを含む外用剤と言えます。
効能又は効果
ビタミンAを有効成分とするザーネ軟膏は、
角化性皮膚疾患(尋常性魚鱗癬*2、毛孔性苔癬*3、単純性粃糠疹*4)
に効果があるとされています。*5
臨床効果
上述の「効能又は効果」だけではよく分からないと思いますので、
臨床効果に関しても引用します。
本剤を尋常性魚鱗癬をはじめとする角化性並びに乾燥性の皮膚疾患を対象に一般臨床試験及び比較対照試験を実施し、その有用性が認められている。
色々と書かれていますが、要するに、
「乾燥性の皮膚疾患に効果がある」ということが言えるわけですね!
アトピーの人は皮膚が乾燥しているので、
ザーネ軟膏を処方されることもある、
ということですね!
作用部位・作用機序
気になる作用機序(薬がどのようなメカニズムで効いているのか)は、
次のように説明されています。
表皮内でレチノールがレチノイン酸に変換され作用するものと推定される。
おい。
「作用するものと推定される」って、
ザックリし過ぎだろ。笑
ビタミンAの効果
さて、前述の作用機序の説明では、
何がどうなっているのかさっぱり分かりませんので、
以下、もう少し詳しくご説明していきます。
ビタミンA油の定義
まず「ビタミンA油」とはなんぞや??
分かりますか?(>_<)
「ビタミンA」なら知ってるけど、油とは?
油を混ぜているんですか??って感じ。
実は、日本薬局方に、ビタミンA油の定義が記載されています。*6
以下、引用します。
ビタミンA油
Vitamin A Oil
本品は合成のエステル型ビタミンAに植物油を加えて希釈
したものである.
本品は1 gにつきビタミンA 30000単位以上を含む.
本品には適当な抗酸化剤を加えることができる.
本品は定量するとき表示単位の90.0 ~ 120.0%を含む.
要するに、ビタミンA油とは、
「ビタミンAに油を加えて希釈したもの」です。
すなわち、そのまんま
「ビタミンA」+「油」=「ビタミンA油」
ということでしたね!
細かい話ですが、
純粋なビタミンA(レチノール)は不安定なため、
エステル型にして安定化させています。*7
ビタミンAの種類
さて、ここまで、「ザーネ軟膏」には、
「ビタミンA油」≒「エステル型ビタミンA」
が入っているということが分かりましたね!
皆さんは「レチノール」という言葉を
聞いたことがあるかもしれませんが、
狭義には「ビタミンA」=「レチノール」です。*8
つまり
「エステル型ビタミンA」=「エステル型レチノール」
と言えます。
また、ざっくり「ビタミンA」という場合には
ビタミンAのグループ(「レチノイド」と言います)
を指していることになります。
その場合は
「ビタミンA」=「レチノイド」となります。
さて、この「レチノイド」には沢山の種類がありますが、
主として、次の4つがあります。*9
「エステル型レチノール(Retinyl Ester)」
「レチノール(Retinol)」
「レチナール(Retinal)」
「レチノイン酸(Retinoic Acid)」
レチノイドの代謝(エステル型⇒レチノイン酸)
「エステル型レチノール(Retinyl Ester)」⇔「レチノール(Retinol)」⇔「レチナール(Retinal)」⇒「レチノイン酸(Retinoic Acid)」
エステル型からレチナールまで(両矢印:⇔)は可逆反応、
レチナールからレチノイン酸(右矢印:⇒)は不可逆反応(一方通行)です。
レチノイン酸の効果
さて、このレチノイン酸には次のような様々な活性があります。*11*12
「表皮細胞の増殖促進」
「コラーゲンの産生促進」
⇒上記作用により「シワ改善」
「皮脂腺に詰まっている皮脂の除去(排出)促進」
⇒上記作用により「皮脂腺の炎症を抑制」「ニキビ改善」
まとめ(ザーネ軟膏が効く仕組み)
ここまで読んでくださって、誠にありがとうございます。
おそらく非常に
こんがらがってきていると思いますが、
ご安心ください。
以下にまとめます。
①「ザーネ軟膏」には有効成分として「ビタミンA油」が配合されている。
②「ビタミンA油」には「エステル型レチノール」が含まれている。
③皮膚で次のように代謝(変換)される。
「エステル型レチノール(Retinyl Ester)」⇔「レチノール(Retinol)」⇔「レチナール(Retinal)」⇒「レチノイン酸(Retinoic Acid)」
④「レチノイン酸」には「表皮細胞の増殖促進」「コラーゲンの産生促進」等の作用があるため、皮膚の保湿機能が補完されて「乾燥性の皮膚疾患に効果がある」といえるわけですね!
以上、本日は「ザーネ軟膏」の効果・作用機序についてご紹介しました!
いかがだったでしょうか??
普段何気なく使っている薬でも、
その仕組みを理解してみると楽しくなりませんか?!(^^)!
是非、気になったことはどんどん調べてみましょう!
本日もお読みいただきありがとうございました!\(^o^)/
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hirororo.hatenablog.jp
*1:http://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=2649724M1039
*2:https://medicalnote.jp/diseases/%E5%B0%8B%E5%B8%B8%E6%80%A7%E9%AD%9A%E9%B1%97%E7%99%AC?utm_campaign=%E5%B0%8B%E5%B8%B8%E6%80%A7%E9%AD%9A%E9%B1%97%E7%99%AC&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo
*3:https://medicalnote.jp/diseases/%E6%AF%9B%E5%AD%94%E6%80%A7%E8%8B%94%E7%99%AC?utm_campaign=%E6%AF%9B%E5%AD%94%E6%80%A7%E8%8B%94%E7%99%AC&utm_medium=ydd&utm_source=yahoo
*4:https://www.hospita.jp/disease/3890/
*5:http://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=2649724M1039
*6:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/JP17.pdf
*7:https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Retinol#section=Nonfire-Spill-Response
*8:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3A
*9:Zasada M, Budzisz E. Retinoids: active molecules influencing skin structure formation in cosmetic and dermatological treatments. Postepy Dermatol Alergol. 2019 Aug;36(4):392-397. doi: 10.5114/ada.2019.87443. Epub 2019 Aug 30.
*10:O'Byrne SM, Blaner WS. Retinol and retinyl esters: biochemistry and physiology. J Lipid Res. 2013 Jul;54(7):1731-43. doi: 10.1194/jlr.R037648. Epub 2013 Apr 26.
*11:Zasada M, Budzisz E. Retinoids: active molecules influencing skin structure formation in cosmetic and dermatological treatments. Postepy Dermatol Alergol. 2019 Aug;36(4):392-397. doi: 10.5114/ada.2019.87443. Epub 2019 Aug 30.
*12:Kong R, Cui Y, Fisher GJ, Wang X, Chen Y, Schneider LM, Majmudar G. A comparative study of the effects of retinol and retinoic acid on histological, molecular, and clinical properties of human skin. J Cosmet Dermatol. 2016 Mar;15(1):49-57. doi: 10.1111/jocd.12193. Epub 2015 Nov 18.